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執筆者の写真夢子 竹井

出版社ブルーモーメントの「願い」

更新日:9月27日



2020年に当時大学4年生だった、代表竹井によって設立された「出版社ブルーモーメント」。これまでに『それでもあなたは美しい オードリー・ヘップバーンという生き方』などの「生き方」シリーズや『彼女たちの20代』など、計7冊の本を刊行しています。今回は、出版社ブルーモーメントの本に込められたこだわりや、SNSで話題となった理由にインターン生Aが迫ります!


1)本に詰め込んだたくさんのこだわり




インターン生A)これまでに「生き方」シリーズなど、計7冊の本を出版されていますが、編集や校正などもおひとりでされる中で、最も大変だったことについて教えてください。


竹井)最も大変だったのは、「原稿自体が良い」という前提があるなかで、その良さを120%、140%と最大限に引き出さなければならないというところです。本の中身自体は良くても、その魅力の引き出し方や見せ方が良くないと、その本を殺してしまうことになってしまうんです。なので、本自体の魅力を殺さないように、むしろ活かすタイトルや装丁を考えなければならなかったというのは、本当に難しいところでした。しかし、「これは殺してないか」「本当に最大限魅力を引き出せているのか」という結果は、実際のところ発売してみて半年ほど経たなければわからないことでもあります。なので、本当に自分と、自分のセンスだけを信じてタイトルや装丁を担っていくのですが、とても頭も使うし、精神的に大変だと感じました。


 

インターン生A)発売してみないと結果が分からないというなかで、どうやって自分のセンスを信じて発売する、という段階まで持っていったのでしょうか?


竹井)私は編集者とか作り手であると同時に、沢山の本に触れてきたかなりの本好き・購入者でもあるので、「自分が欲しいと思える本づくり」というのをとても意識していました。私の性格自体がお金遣いが荒いほうではなく、本当に欲しいものだけしか買わないタイプなので、「この本良いこと書いてあるのになんか買いたくないな」という本もあるし、「内容がすごく好きだけど、表紙の絵が好きじゃないな」という本もあります。そういった本に何冊も触れてきたからこそ、イチ購入者としての感覚を、できる限り研ぎ澄まして持つようにはしていました。なので、作り手である自分からすると、「ここにこういうこだわりを入れたらいいな」というのはあるのですが、本当にそれが購入者に響くこだわりなのか、それとも自己満足だけのこだわりなのか、というところを見極めることはとても大事にしていました。だからこそ、「作り手としての自信」はないけれど、イチ購入者としての「これ欲しい、これ欲しくない」というはっきりとした意識への自信というか、「見る目」があって、そういうところから、完成まで持っていけたのではないかな、と考えています。


 

インターン生A)「生き方」シリーズは装丁が非常に人気ですが、どのようなこだわりを持って作られているのでしょうか?


竹井)それを語ろうとすると1時間では収まらなくなってしまいますね(笑)。簡単に申し上げますと主に3つありまして、「サイズ」「触り心地」「全体感」です。

サイズに関しては全て特注で、ブルーモーメント独自のものになっています。一般的な文芸書のタテとヨコを少しカットして、文庫本ではないけれど少し触り心地や抱き心地がよく、持っていると落ち着くようなサイズにしています。なので、ミリ単位で調整をかけて「手にフィットするかわいらしくて落ち着くサイズ」を実現しました。

また、それぞれに「箔押し」と呼ばれる金や銀の飾りがついていたり、ツヤ感のある紙やマット感のある紙を選んだり、『彼女たちの20代』であれば「ベルベット」と呼ばれる、紙に布っぽさを出す加工を施したり、紙の素材やキラキラ感に至るまで、紹介する人や本の内容に合わせてた服を本に着せています。例えば、「マリリンはツヤだよね〜」とか、「シャネルはモリっと金を入れたいよね」とか、そのように決めているわけです。

3つ目の「全体感」に関しては、色味なんかもそうですが、特に「生き方」シリーズは表紙に写真が大きく載っているので、その写真にはこだわっています。世間一般がその人に抱いているイメージ像に合致した写真ではなく、ブルーモーメントが見出したその人の魅力が溢れ出している写真を選んでいるんです。オードリー・ヘップバーンで言うと、世間一般のイメージでは煌びやかな衣装に身を包んで、こちらを向いてかわいらしく微笑んでいる写真ですよね。しかし、ブルーモーメントが見出した彼女の魅力に合致するのは、少し自信なさげだけれど、でも何か決意をしているような表情の、あえて横向き・遠めの写真なんです。あるいはダイアナも、笑っているんだけれどどこか悲しさも滲んでいて、でも同時に強い決心を感じるような写真を選んでいます。何枚もピックアップした写真を拡大して拡大して、「何か違うな?」とか、そうやって選んでいるんです。「The・その人」という写真を表紙にした方が、もしかしたら売れるかもしれないけれど、そうではなく、しっかりとその人の内面と向き合って、良さが滲み出ている写真を選ぶというのが、大きなこだわりです。


 

インターン生A)「生き方」シリーズのタイトルへのこだわりを教えてください。


竹井)まず、タイトルの付け方へのこだわりに関しては写真と似ていて、書店に訪れる方々が元々持っているその人の像「ではないよ」ということを伝えたい、という想いを持っています。例えば、マリリン・モンローであれば「官能的で可愛い女優さん」だったり、ダイアナであれば「ザ・プリンセスダイアナ」だったり。そういったイメージを持たれている方が多いのですが、そうではなく、その人の中身を見てほしいんです。なので、その人の代名詞でなくても、興味を持っていただけるようなタイトルを付けたいと元々考えていました。例えば、私はマリリン・モンロー自身には興味が無くても、繊細さに悩んでいる方には絶対に本を届けたかったので、「マリリン・モンローという生き方」の方をサブタイトルに持ってきて、繊細さを持っている方に響くようなタイトルを大きくしようと考えていました。ジャクリーンに関しても、ジャクリーン・ケネディという名前には政治的な色がついてしまっているけれど、そうではなく「何か特別さを持ちたい」、「強さが欲しい」と考えている方に届いて欲しいからそういった方に届くようなタイトルを考えたい、とそう考えていたわけです。


 

インターン生A)「生き方」シリーズの中で1番人気の本はどれですか?




竹井)『それでもあなたは美しい オードリー・ヘップバーンという生き方』です。ちょうど本日(インタビュー日、2024/2/16)、9刷が決定しました。次に人気なのは、『あなたの繊細さが愛おしい マリリン・モンローという生き方』と『シャネル哲学 ココ・シャネルという生き方』で、人気は同じくらいです。次に『だから自分を変えたのです ダイアナという生き方』、『特別な存在になりなさい ジャクリーン・ケネディという生き方』と続きます。ちなみに、『彼女たちの20代』の人気は、マリリン・モンローやココ・シャネルと同じくらいです。


 

インターン生A)『それでもあなたは美しい オードリー・ヘップバーンという生き方』の人気の理由は何だと思いますか?


竹井)私は元々シャネルが1番人気だろうと想定していました。やっぱり知名度も高いし、母が出していた元々のシリーズでも一番人気だったので。発売してみてオードリーが1番人気となった理由は装丁と帯かな、と考えています。ピンクのかわいらしい装丁と、「自信が持てない」という様々な人に共感されやすい文言が帯に入っていることで、オードリーを知らない方や、オードリーの違う側面を知りたいという方に購入いただけたのだと思います。


 

インターン生A)竹井さん自身が一番元気づけられたのはどの本ですか?



竹井)1番人気がないのですが、『特別な存在になりなさい ジャクリーン・ケネディという生き方』が一番好きです(笑)。何度も読んでいます。経営をしていると自分の弱さと向き合わなければいけない場面も多いし、それ以上に自分を奮い立たせなければならない場面が本当に多くて。そんなとき、ジャクリーンに似ている部分を見出して元気づけられていました。シャネルなんかは元々の強さがあったという印象を持っていたし、マリリンやオードリーも、努力も勿論あったとは思うのですが、やっぱり精神面以外の強さを持っていたと感じるのですが、ジャクリーンは圧倒的な努力と、圧倒的な自分への自信で成長してきた人なので、自分と重ねてパワーを貰っています。


 

インターン生A)「生き方」シリーズを続けて刊行されていた中で、『彼女たちの20代』を刊行した背景を教えてください。




竹井)「生き方」シリーズを刊行していく中で、シリーズの本が凄く好きだと感じると同時に、やっぱり結論をまとめてしまうとみんな「凄いな」で完結してしまうような気がしていました。だからこそ、「この人たちって本当に皆最初から凄かったんだっけ」というところが気になったんです。紹介している女性たちは皆、「生き方」シリーズではスポットライトがあたらないような長い時間を過ごしているはずだ!と、ずっと考えていたわけです。

そんな中で、私もちょうど20代だったので、「生き方」シリーズのように人生全体を見るのではなくて、「成功しました!」というストーリーでもなくて、本当にフラットに20代を切り取ったときに皆どういった20代を過ごしていたんだろう、という素朴な疑問を抱きました。そして、「私が気になるということは、皆気になるのではないか」と、自分の中の購入者としての感覚を信じて、シリーズとは別の本としての刊行を決定しました。

実際に刊行してみると、20代の方だけでなく、10代の方だったり、娘の成人式に贈りたいという親御様だったり、幅広い層の方にご好評を頂くことができました。


 

インターン生A)これから刊行してみたい書籍はありますか?


竹井)今後は活字は勿論、イラストや漫画など、幅広い表現の本を刊行していきたいと考えています。表現方法を縛らずに様々な本を出していきたいです。


 

インターン生A)電子書籍が主流となりつつありますが、出版社ブルーモーメントの電子書籍化構想についてお聞かせください。


竹井)現状は電子書籍化を想定していません。理由は2つありまして、1点目は私が全く電子書籍を読まないから、という理由です。購入者としての感覚が全くない中で、「伸びている」という理由で電子書籍を出すのは自分の方針に反するんです。2点目は、紙の本でしか伝わらないものがあると考えているからです。ブルーモーメントの本はその最たるものだと考えています。なので、電子書籍という媒体はブルーモーメントの本には合っていないんです。ただ、今後電子でも変わらずに伝えたいものが伝わるような書籍が出版できたなら、電子書籍化も考えていきたいと思っています。



2)SNSで広がった出版社ブルーモーメント



インターン生A)出版社ブルーモーメントはSNSで度々話題となっていますが、SNSを使ったマーケティングに力を入れた理由を教えてください。


竹井)出版社を立ち上げるとなったときに、周囲にとても反対されました。大変な業界でもあるし、マーケティングにもテレビや新聞を使用するという、大きなお金がかかる手法が当時一般的だったからです。そんな状況の中で闘っていくならば、自分の強みを活かさなければならないということは明白でした。なので、自分が出来ないことをして何とか賄うよりは、自分が出来ることを尖らせていったほうがいいな、と思い、まず1つの強みとして、「若い」という点をあげました。自分には「若い」という強みがあるので、だったら購買力のあるとされる50代よりも、自分と感性の合った20代の若い女性をターゲットにしていこう、と決めました。まさに自分のような人をターゲットにしたわけです。また、当時Instagramで発信をすることに慣れていたので、そこを活かすしかないな、というのもありました。これしか生きる道はない!という想いで、SNSで自分と同じ年代層の女性をターゲットに売っていこうと決めたわけです。


 

インターン生A)実際にSNSをマーケティングに活用していく中で、その反響はいかがでしたか?


竹井)出版業界は資金繰りが困難と言われていて、特に私が契約した会社の場合は、1月に売れた本の売り上げは9月に入ってきます。出版社ブルーモーメントを立ち上げた当時、お金が無くて、売り上げが入ってくるまで待てない状況でした。なので、オンラインでの販売を先行させたんです。戦略としては、一番最初に私のことを応援してくれる方に買っていただき、その後に、ご購入いただいた方個々人に、友人やフォロワー様にブルーモーメントの書籍について発信してもらうという戦略でした。なので、まずは私自身のSNSを頑張って応援してくださる方を増やし、「予約販売」を発売の3週間前から開催しました。その時は個人アカウントを開設してから3か月ほどしか経っていなかったのですが、毎朝毎晩投稿を続けて、ブルーモーメントや自分に関する情報を全て載せて、なるべく応援してもらうように必死で努力しました。その結果、予約販売の1番最初の段階から冊数で言うと700冊以上、初回で一気に売れました。また、そのとき購入していただいた応援者の方が、さらに盛り上げてくれて。「応援しています」といったような投稿を上げていただいたことで、認知が広がりました。なので、一番最初にSNSで大きな反響を得られたのは、予約販売当時です。

次の段階としては、発売した後に、インフルエンサーさんにギフティングをおこなったときです。この取組によってかなり認知が広がったので、今の出版社ブルーモーメントの売り上げの中で、マーケティング費用は0円のままずっと続いています。宣伝費や広告費が0円のまま抑えられているというのは、やはりブルーモーメントの強みでもあるし、ここまでやってこれた理由でもあるのかな、と考えています。


 

インターン生A)お話を伺ったり、外部視点から見ていると、出版社ブルーモーメントのSNSは非常に成功されているように見えるのですが、実際苦労した点や失敗した経験などはありますでしょうか?




竹井)今も非常に苦労し続けているのですが、やっぱり出版社ブルーモーメントのコンテンツは全てひとりで作っているので、刊行数自体が少ないという弱みがあります。そうなってくると、多種多様な本を紹介できるわけではありません。特に、最初の1年間は3冊しかないという状況において、その3冊をどのように多種多様な角度から紹介したらいいのか、という点は骨が折れた部分でした。例えば印刷所へ足を運んで本を作っている工程を撮影させていただいたり、自分が梱包している姿を撮影したり、あるいは本のカバーをカメラの前でかざしてみたり、どのように3冊を紹介していくかというところを、本当に頭をひねって絞り出しました。そこが非常に苦労した点です。


 

インターン生A)SNSで出版社ブルーモーメントの存在が広がっていった中で、どういった感想を貰うことが多いのでしょうか?


竹井)やっぱり、凄く人生が上手くいっているというような方はあまり弊社の本は手に取りません。心のどこかで人生にモヤっとしたものを抱いている方や、ずっとネックになっている悩みを抱えている方に手に取って頂くことが多いんです。なので、「ブルーモーメントの本を読んで人生が凄く明るくなりました!」とか、そういったことはないのですが、「今の自分を少し肯定できました」とか、「悩んでいること、辛いことは悪いことではないのだと思えるようになりました」といった感想を頂くことが多いです。それは私にとっても「そうであってほしいな」と願っていたことでもあるので、本当に嬉しいと感じています。





ありがとうございました!こだわりを知っていると、本を読む際にもっと楽しくなりますね。


最後までご覧いただき、ありがとうございました。「生き方」シリーズなど出版社ブルーモーメントのコンテンツには、お客様にお喜びいただけるよう、願いやこだわりをたくさん詰めております。これからも出版社ブルーモーメントを傍で見守っていただけますと幸いです。ーー(出版社ブルーモーメント一同)


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